2026/07/01 コラム
建設業許可の「一般」と「特定」の違いは?どちらを取得すべきか
はじめに
建設業許可には、「一般建設業許可」と「特定建設業許可」という2つの大きな区分があることをご存知でしょうか。これは、許可業種(29種類)とは別の、事業の規模や役割に応じた区分です。この「一般」と「特定」の違いを正しく理解せず、自社の事業実態に合わない許可を取得してしまうと、受注できる工事の規模が制限されたり、法律違反を犯してしまったりする可能性があります。
特に、事業の拡大に伴い、元請として大規模な工事を受注しようと考えている建設業者にとって、「一般」から「特定」への切り替え(般特新規)は、重要な経営課題となります。
本記事では、この「一般建設業許可」と「特定建設業許可」の実務上の違いは何か、そして、どのような場合にどちらの許可を取得すべきなのか、その選択のポイントを弁護士が解説します。
Q&A
Q1: 「一般建設業許可」と「特定建設業許可」、一番の違いは何ですか?
実務上の大きな違いは、「発注者から直接請け負った工事について、下請に出せる金額の上限」です。なお、許可要件の厳しさや、下請保護のために課される義務にも違いがあります。
一般建設業許可では、元請として請け負った1件の工事につき、合計5,000万円以上(建築工事業の場合は8,000万円以上)となる下請契約を締結することはできません。
一方、特定建設業許可では、この下請発注金額について法律上の上限は設けられていません。ただし、一括下請負の禁止や監理技術者の配置など、別途守るべき規制があります。
Q2: 当社は、常に大手ゼネコンの一次下請として、大規模な工事の一部を請け負っています。この場合、特定建設業許可は必要ですか?
いいえ、原則として不要です。 この金額制限が適用されるのは、「発注者から直接工事を請け負った元請負人」の立場の場合のみです。したがって、どれだけ大規模な工事であっても、二次下請、三次下請として工事を請け負う場合や、一次下請として請け負った工事をさらに再下請に出す場合であっても、この下請発注額による特定建設業許可の制限は適用されません。ただし、主任技術者の配置や一括下請負の禁止など、別途守るべき規制があります。
Q3: 「特定建設業許可」を取得するのは、「一般」に比べて難しいのでしょうか?
はい、より厳しくなります。 特定建設業許可は、大規模工事の元請として、多くの下請業者を統括し、その支払い能力などを担保する重い責任を負うため、許可要件が厳しく設定されています。具体的には、①財産的基礎(資本金2,000万円以上、自己資本4,000万円以上など)と、②営業所技術者等(特定営業所技術者。指定建設業では原則として一級の国家資格者など)の両面で、一般建設業許可よりもはるかに高いハードルが設けられています。
解説
「一般」と「特定」の選択は、自社が建設業界のサプライチェーンの中で、どのような役割を担うのか、という事業戦略そのものと直結します。
1. 実務上の違いは「下請発注金額の上限」のみ
この点を図でイメージすると分かりやすいでしょう。
【例:1億円のビル建築工事を、発注者Aから元請Bが受注した場合】
- B社が「一般」許可の場合
B社は、この1億円の工事のうち、下請業者C社、D社、E社…に発注する金額の合計が、8,000万円未満でなければなりません。残りの部分は、自社施工とするなど、下請契約の合計額が8,000万円未満となるよう調整する必要があります。 - B社が「特定」許可の場合
B社は、下請契約の合計額が8,000万円以上となる場合でも、特定建設業許可を前提に下請発注を行うことができます。ただし、工事の全部又は主たる部分を一括して他人に請け負わせることは禁止される場合があるため、一括下請負規制に注意が必要です。
【重要】注意点
- この金額制限は、下請業者1社あたりの金額ではなく、その工事で下請に出す合計金額です。
- この制限は、元請の立場の場合のみ適用されます。下請がさらに再下請に出す場合は、この制限の対象外です。
2. なぜ「特定」の要件は厳しいのか?
特定建設業許可の要件が厳しいのは、下請業者の保護という、建設業法の重要な目的があるからです。大規模工事の元請には、多くの下請業者が連なります。もし、その元請の経営が不安定であったり、技術力が低かったりすると、下請業者への不払いや、工事全体の品質低下といった、深刻な問題を引き起こしかねません。
そのため、特定建設業者には、下請業者への支払いを確実に行えるだけの財産的基礎と、大規模・複雑な工事を管理できるだけの技術力が、法律によって厳しく求められるのです。
3. どちらの許可を取得すべきか?
「一般建設業許可」で十分なケース
- 下請工事のみを請け負う場合。
- 元請として工事を請け負うが、下請への発注額が5,000万円(建築一式は8,000万円)を超えることがない場合。
- 500万円未満の軽微な工事しか請け負わない場合(そもそも許可不要)。
「特定建設業許可」が必要なケース
発注者から直接、大規模な工事(公共工事、民間デベロッパーからの工事など)を元請として受注し、その大部分を様々な専門工事業者に下請発注する計画がある場合。
弁護士に相談するメリット
- 事業計画に基づいた許可戦略の立案
貴社の今後の事業展開(公共工事への参入、元請受注の拡大など)をヒアリングし、どのタイミングで、どの業種の「特定建設業許可」を目指すべきか、法務と経営の両面から戦略的なアドバイスを提供します。 - 厳格な要件のクリアに向けたサポート
特定建設業許可の厳しい財産的要件や技術者要件をクリアするため、資本政策や人材確保に関する助言を行い、行政書士などの専門家と連携して、確実な許可取得をサポートします。
まとめ
「一般建設業許可」と「特定建設業許可」の選択は、自社の将来像をどう描くかという問題です。特に重要なのは、「元請として受注した工事について、どの規模まで下請契約を締結できるか」という点です。
まずは「一般」で実績を積み、会社の財務基盤と技術力が充実してきた段階で、事業拡大を目指して「特定」に挑戦するのが、多くの企業の成長ステップです。自社の現状と将来の目標を見据え、適切な種類の許可を選択・取得することが、健全な事業運営の礎となります。
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