コラム

2026/02/10 コラム

【建設業】工期遅延の損害賠償と追加工事の代金請求|トラブル回避の鉄則と契約実務

はじめに

建設工事は、自然環境や資材の流通状況、施主の意向の変化など、不確定な要素が多いプロジェクトです。そのため、当初の予定通りに工事が進まないことや、内容が変更になることは日常茶飯事と言えます。

しかし、法的な観点から見ると、これらは単なる「現場の都合」では済まされません。

「工期遅延」は契約上の義務違反(債務不履行)となり、損害賠償の対象となります。また、「追加工事」は、契約の変更手続きを経ていなければ、最悪の場合「勝手にやったこと(ボランティア)」とみなされ、代金を請求できない恐れがあります。

トラブルが発生したときに自社を守れるかどうかは、契約書の内容と、工事中の記録(証拠)にかかっています。本記事で、リスクを回避するための正しい知識を身につけましょう。

工期遅延・追加工事に関するQ&A

まずは、現場の実務担当者様からよくいただく切実な疑問について、QA形式で解説します。

Q1. 施主から現場で「ここも直しておいて」と言われたので工事しました。後から請求したら「頼んでいない」と言われたのですが、回収できますか?

書面がない場合、回収のハードルは高くなります。

口頭での契約も法的には有効ですが、「言った言わない」の水掛け論になると、受注者側が「追加工事の合意があったこと」と「金額の合意があったこと」を立証しなければなりません。タダでやってくれるサービスだと思われていた場合、請求が認められないリスクがあります。最低限、メールやLINEで指示内容と金額の承認を残しておく必要があります。

Q2. 台風や大雨が続いて工期が遅れました。それでも遅延損害金を払わなければなりませんか?

「不可抗力」による遅延であれば、原則として損害賠償責任は負いません。

ただし、何が「不可抗力」にあたるかは契約書の定めによります。一般的な約款では、天災地変や資材の社会的欠乏などが不可抗力として定義されています。この場合、工期の延長を請求することはできますが、増加した費用(足場のリース期間延長料など)を誰が負担するかは契約内容次第となるため、注意が必要です。

Q3. 施主がなかなか色決めをしてくれず、着工が遅れました。これによる工期遅延の責任はどうなりますか?

施主(発注者)に原因がある場合、業者は責任を負いません。

むしろ、施主の協力義務違反として、工期の延長はもちろん、待機期間に発生した損害(人件費や機械のリース料など)の賠償を請求できる可能性があります。ただし、これらを主張するためには、「いつ、どのような指示待ちが発生し、どれだけの損害が出たか」を記録に残しておくことが不可欠です。

解説:工期遅延と追加工事のリスクマネジメント

ここからは、「時間(工期)」と「お金(追加代金)」に関するトラブルの法的構造と、具体的な対策について解説します。

1. 「追加工事」で泣き寝入りしないための対策

当初の契約に含まれていない工事(追加工事・変更工事)は、建設紛争の最大の火種です。

なぜトラブルになるのか?

多くのケースでは、現場監督と施主の間で「とりあえずやっておきます」「お願いします」という口頭のやり取りだけで工事が進んでしまいます。

しかし、工事が終わっていざ請求書を出すと、施主は「そんな金額だとは聞いていない」「当初の予算内でやってくれると思っていた」と主張し、支払いを拒否します。

「契約変更」の手続きを怠らない

建設業法や民法の原則に立ち返ると、当初の契約内容(工事範囲・金額)を変更するには、当事者間の合意が必要です。

理想的には、追加工事が発生するたびに「変更契約書」を作成すべきですが、実務上は難しいこともあるでしょう。その場合でも、以下の対策を講じてください。

  • 「追加工事・変更工事合意書」を作成する: 簡易な書式で構いませんので、工事内容と金額を記載し、施主のサインをもらいます。
  • 見積書へのサインをもらう: 合意書を作る時間がない場合、追加見積書を提出し、その備考欄などに「発注します」という署名をもらうだけでも強力な証拠になります。
  • 「総価契約」と「単価契約」の違いを理解する: 「一式〇〇円」の総価契約の場合、どこまでが含まれているかが曖昧になりがちです。見積書の内訳を詳細にし、「これ以外は別途費用」と明記することが重要です。

2. 「工期遅延」による損害賠償請求(遅延損害金)

    工期内に工事が完成しなかった場合、施主から「遅延損害金」を請求されることがあります。

    遅延損害金の計算方法

    多くの工事請負契約書では、「工期内に完成しない場合、請負代金額に対し、遅延日数1日につき年〇%の割合で計算した額を支払う」といった「損害賠償額の予定」が定められています。

    この条項がある場合、施主は「実際にいくら損をしたか」を証明する必要がなく、計算式に基づいて自動的に損害金を請求できてしまいます。

    責任を免れるケース(不可抗力と発注者事由)

    工期が遅れても、その原因が建設業者(請負人)になければ、責任を負う必要はありません。

    • 不可抗力: 異常気象(台風、豪雪)、大地震、戦争、予見できない資材の供給停止など。
    • 発注者事由: 施主による仕様決定の遅れ、近隣トラブルへの対応不備(施主が対応すべき場合)、先行工事の遅れなど。

    【重要】

    遅延の原因が不可抗力や発注者にある場合は、遅れが生じると判明した時点で速やかに「工期延長の申し入れ」を書面で行う必要があります。「言わなくてもわかってくれるだろう」と放置し、工期末になってから延長を求めても、認められないケースがあります。

    3. 施主都合の変更・遅延に対する「費用請求」

    施主の都合で工事が中断したり、やり直しになったりした場合、工期の延長だけでなく、増加した費用の請求(損害賠償請求)も検討すべきです。

    • 待機費用の請求: 施主の指示待ちで職人が手待ちになった場合の人件費。
    • 資材価格変動のリスク: 工期が大幅に延びたことで、その間に資材価格が高騰した場合、契約書にスライド条項(インフレスライド等)があれば、差額を請求できる可能性があります。
    • 変更工事による減額: 施主の都合で工事の一部が中止(減額)になった場合、すでに手配済みの資材費や、得られるはずだった利益(逸失利益)を補償してもらえるよう交渉する必要があります。

    4. 証拠の残し方(議事録の重要性)

    言った言わないのトラブルを防ぎ、遅延の正当性を証明するために有効なのが「打ち合わせ記録(議事録)」です。

    • 誰が、いつ、何を指示したか: 「施主からキッチンの仕様変更の指示あり。これに伴い工期が〇日延びる旨を伝え、了承を得た」といった記録を残します。
    • 共有する: 作成した記録は、メール等で相手方に送り、「認識に相違があれば〇日以内に連絡ください」と伝えます。反論がなければ、その内容で合意があったと推認される有力な証拠となります。

    弁護士に相談するメリット

    工期やお金の問題は、当事者同士で話し合うと感情的になりやすく、解決が長引く傾向があります。弁護士法人長瀬総合法律事務所にご相談いただくことで、以下のようなメリットがあります。

    1. トラブル発生時の交渉代理

    「追加代金を払ってもらえない」「不当な遅延損害金を請求された」といった場合、弁護士が貴社の代理人として、契約書や法律に基づき、相手方と交渉します。法的根拠を持って主張することで、相手方の譲歩を引き出し、早期解決を図ります。

    2. 「勝てる」契約書の作成・リーガルチェック

    将来のトラブルを防ぐためには、契約段階での対策が最も効果的です。「追加工事は書面合意を必須とする」「不可抗力による工期延長を明記する」「資材高騰時の価格調整条項を入れる」など、貴社のリスクを最小限に抑える契約書の作成をサポートします。

    3. 証拠収集と戦略立案

    トラブルが訴訟に発展した場合を見据え、どのようなメール、日報、写真が証拠として有効かをアドバイスします。早い段階で弁護士が関与することで、有利な証拠を確実に残し、裁判を有利に進める準備が整います。

    まとめ

    工期遅延や追加工事のトラブルは、建設業者の利益を直接圧迫する重大な問題です。

    「お客様との関係を壊したくない」という理由で、契約変更の手続きを曖昧にしたり、損害賠償のリスクを放置したりすることは、結果として会社の存続を危うくします。

    • 追加工事は、必ず着工前に金額を提示し、書面(合意書・見積書へのサイン)をもらう。
    • 工期遅延が発生しそうな場合は、原因を特定し、速やかに工期延長を申し入れる。
    • 不可抗力や施主都合による遅延であれば、堂々と延長と費用負担を主張する。
    • 全てのやり取りを「議事録」や「メール」で記録に残す。

    もし現在、追加工事代金の未払いや、工期遅延による損害賠償請求でお困りの場合は、諦める前に弁護士法人長瀬総合法律事務所にご相談ください。

    貴社の正当な利益を守るため、建設業法務を扱う弁護士がサポートいたします。


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