コラム

2026/02/03 コラム

建設業者が知るべき「契約不適合責任」と保険活用法|民法改正後の実務対応

はじめに

「引き渡してから3年経った施主から、壁紙の浮きを直せと言われた」
「図面と異なる部材を使っていたことが発覚し、代金の減額を求められた」

建設工事において、引き渡し後のクレーム対応は避けて通れない課題です。かつては「瑕疵担保責任」と呼ばれていたこの責任ですが、現在は「契約不適合責任」として、より厳格な運用が求められています 。

この法改正は、建設業者にとって「リスクの拡大」を意味します。しかし、正しく法律を理解し、契約書で適切な防衛線を張り、保険で備えておけば、過度な恐れを抱く必要はありません。

本記事で、ルールと実務的なリスクマネジメントの手法を確認しましょう。

瑕疵担保責任・契約不適合責任に関するQ&A

まずは、現場の実務担当者様からよくいただく疑問について、QA形式で解説します。

Q1. 「瑕疵担保責任」と「契約不適合責任」は何が違うのですか?

名称だけでなく、責任の発生要件とペナルティの種類が変わりました。

旧法の「瑕疵」は「隠れた欠陥」を指していましたが、新法の「契約不適合」は「契約の内容(種類・品質・数量)と適合しないこと」を指します , 。つまり、「欠陥があるかどうか」だけでなく、「契約書や図面通りか」がより厳しく問われます。また、施主ができる請求として、従来の「修補」「損害賠償」「解除」に加え、新たに「代金減額請求」が認められました 。

Q2. クレームはいつまで対応しなければなりませんか?

契約書の記載内容と、対象となる部位によって異なります。

民法の原則では「不適合を知った時から1年以内」に通知されれば責任を負いますが、これでは期間が長すぎるため、通常の民間工事契約では「引渡しから2年」といった特約を結ぶのが一般的です 。ただし、新築住宅の「構造耐力上主要な部分」と「雨水の浸入を防止する部分」については、品確法(住宅品質確保促進法)により、引渡しから10年間の責任義務があります 。

Q3. 何かあったときのために、どのような保険に入っておくべきですか?

「建設工事保険」と「瑕疵保険(履行保証保険)」の2つが重要です。

工事中の事故や火災に備えるのが「建設工事保険」、引き渡し後に発見された不具合(契約不適合)の補修費用に備えるのが「瑕疵保険(住宅瑕疵担保責任保険など)」です 。特に新築住宅を供給する場合、資力確保措置(保険加入または供託)は法律上の義務となっています。

解説:契約不適合責任の仕組みとリスクマネジメント

ここからは、民法改正後の法的責任の詳細と、具体的な対策について解説します。

1. 「契約不適合責任」とは何か?

契約不適合責任とは、引き渡された目的物が「種類、品質または数量に関して契約の内容と適合しない」場合に、受注者(建設業者)が負う責任のことです。

「契約内容」が全ての基準になる

以前の「瑕疵」という概念は抽象的でしたが、「契約不適合」は「契約書・設計図書・見積書と合っているか」が基準になります。

例えば、性能的には問題がない部材であっても、契約書で指定されたメーカーや品番と異なるものを使用していれば、承諾がない限り「契約不適合」となります。

したがって、「現場判断での仕様変更」は非常に危険です。変更が生じる場合は、必ず発注者の書面による承諾を得る必要があります 。

2. 発注者(施主)が持つ「4つの権利」

契約不適合(欠陥や契約違反)があった場合、施主は建設業者に対して以下の4つの請求を行うことができます。

  1. 追完請求(修補請求): 「直してください」という請求。これが原則的な対応です 。
  2. 代金減額請求: 修補ができない場合、あるいは業者が修補に応じない場合に、「その分、代金を安くしてください」と請求する権利です(新設)。
  3. 契約解除: 不適合が重大で、契約の目的を達成できない場合に、契約を白紙に戻すことです。
  4. 損害賠償請求: 不適合によって生じた損害(補修中の仮住まい費用や営業補償など)を金銭で請求することです 。

特に注意すべきは「代金減額請求」です。補修が難しい場合でも、過去の事例では「欠陥分として請負代金を減額する(返金する)」という決着が図りやすくなりました。

3. 責任を負う期間(時効と通知期間)

いつまで責任を負うかは、法律(民法・品確法)と契約の組み合わせで決まります。

法律・契約

期間の定め

備考

民法(原則)

不適合を知った時から1年以内に通知

知った時から1年なので、引渡しから10年後などに発見されれば請求されるリスクがある。

契約特約(推奨)

引渡しから2(設備は1年など)

民法の規定は任意規定なので、契約書で期間を短縮・限定することが可能(消費者契約法等の制限に注意)。

品確法(義務)

引渡しから10年間

新築住宅の「構造」と「雨水防水」については、契約で短縮することはできず、必ず10年保証が必要。

重要対策

民法の原則(知った時から1年)のままだと、責任期間が不安定で長期間リスクを負います。必ず契約書(約款)で、「契約不適合責任の期間は引渡しから〇年とする」と明確に期間を区切る条項(責任期間の制限)を入れてください。

4. 建設業者が加入すべき「保険」によるリスクヘッジ

どんなに注意して施工しても、ヒューマンエラーや資材の不具合によるリスクをゼロにすることはできません。そこで重要になるのが保険です。

住宅瑕疵担保責任保険(まもりすまい保険など)

新築住宅を供給する建設業者には、「住宅品質確保促進法(品確法)」に基づき、10年間の瑕疵担保責任を履行するための資力確保(供託または保険加入)が義務付けられています。

  • 対象: 新築住宅の「構造耐力上主要な部分」と「雨水の浸入を防止する部分」。
  • メリット: 万が一、瑕疵が見つかった場合の補修費用が保険金で支払われます。また、業者が倒産してしまった場合でも、施主が直接保険金を請求できるため、施主の安心感にもつながります。
  • リフォーム瑕疵保険: 義務ではありませんが、リフォーム工事や既存住宅の売買における検査と保証をセットにした保険もあります。加入することで「第三者の検査済み」という付加価値を営業に活かせます。

建設工事保険(工事中の事故)

引き渡し前の工事期間中に、火災、盗難、破損などで工事の目的物が損害を受けた場合をカバーします。

  • 組立保険: 設備工事や機械の据付工事などに特化した保険もあります。

請負業者賠償責任保険(第三者への損害)

工事中の事故で、通行人に怪我をさせたり、隣の家の車を傷つけたりした場合(第三者賠償)をカバーします。

建設業の保険は種類が多く複雑ですが、「どの保険で」「いつの時点の」「どのような事故・不具合」がカバーされるのかを整理しておくことが、経営の安定につながります。

弁護士に相談するメリット

契約不適合責任や保険の問題は、法律と建築技術が絡み合う複雑な分野です。弁護士法人長瀬総合法律事務所にご相談いただくことで、以下のようなメリットがあります。

1. 民法改正・品確法に対応した契約書の作成

市販の古い雛形を使い続けていると、民法改正に対応できておらず、不必要な長期責任を負うリスクがあります。当事務所では、貴社の業務内容に合わせて、責任期間や範囲を適切に限定し、リスクをコントロールできる契約書(約款)の作成・修正を行います。

2. 不当なクレーム・過剰な要求への対応

施主から「これは契約不適合だ」と指摘された際、それが本当に法的責任を負うべきものなのか(経年劣化ではないか、許容範囲の施工誤差ではないか)を判断するのは困難です 。弁護士が間に入ることで、法的な根拠に基づいて交渉し、過剰な要求(全部やり直しや不当な減額請求)を退けることができます。

3. 紛争発生時の解決サポート

万が一、裁判や調停に発展した場合でも、建築紛争に強い弁護士が代理人として活動します。また、保険会社への保険金請求において、法的な理屈付けを行うことで、スムーズな支払いをサポートできる場合もあります。

まとめ

「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」への変化は、建設業者に対して、より厳密な契約管理と施工管理を求めるものです。しかし、裏を返せば、契約書の内容さえしっかりしていれば、責任の範囲を明確にできるということでもあります。

  • 「契約不適合」とは、契約内容(図面・仕様書)との不一致のこと。
  • 勝手な仕様変更はNG。変更時は必ず書面で合意を残す。
  • 責任期間は契約書で「引渡しから〇年」と明確に区切る。
  • 品確法の10年義務と、万が一のための瑕疵保険加入を徹底する。

「うちは技術があるから大丈夫」という過信は禁物です。

契約書のリーガルチェックや、現在加入している保険の内容確認、あるいは発生してしまったクレームへの対応について、不安や疑問をお持ちの建設業者様は、ぜひ弁護士法人長瀬総合法律事務所にご相談ください。

貴社の技術と信用を、法律の力で守ります。


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