2024/12/18 コラム
石綿対策の基本知識と実務ポイント
Q&A
Q: 石綿(アスベスト)対策について、なぜ一般の方にも知っておく必要があるのでしょうか?
A: 建物の解体や改修、あるいは老朽化した施設の処理など、石綿が含まれる可能性のある環境は、誰しもが意外な場面で遭遇する可能性があります。
石綿は健康被害を引き起こすリスクがあるため、事業者はもちろん一般の方も、安全対策・法令遵守の重要性を理解しておくことが大切です。また、近隣住民や関係業者、建物所有者として適切な知識を持つことで、健全な環境づくりや将来的なトラブル回避にもつながります。
このコラムでは、石綿対策の基本的な流れや必要な措置を解説します。
はじめに
このガイドは、建築物の解体や改修などにおいて石綿(アスベスト)対策が求められる際、どのような手順を踏むべきか、どのような措置が必要かをわかりやすく整理したものです。
具体的には、事前調査から作業計画の策定、当局への届け出、隔離措置、立ち入り禁止措置までの基本プロセスを、実務ポイントや注意点を交えながら解説します。また、弁護士に相談するメリットや、関連する動画解説も紹介し、読者が包括的な理解を得られることを目指しています。
石綿対策の必要性と背景
石綿(アスベスト)とは何か
石綿は、かつて建材や化学設備などに幅広く利用された鉱物繊維です。熱や摩耗、耐久性に優れ、さまざまな場面でコストパフォーマンスも良好だったため、かつては大量に使われてきました。しかし、石綿粉じんを吸い込むことで肺がんや中皮腫、アスベスト肺などの重篤な疾病を引き起こすことが判明し、現在では石綿を含む建材の製造、輸入、譲渡、提供、使用は原則として禁止されています。
なぜ石綿対策が必要なのか
老朽化した建物の解体や改修時には、かつて使われた石綿が見逃しにくい形で残っている可能性があります。そのため、事業者は労働者や周辺環境への健康被害を避けるため、法律で定められた「石綿障害予防規則」などのルールに沿った対策を講じなければなりません。これにより、労働安全だけでなく、地域社会の健康と環境保全にもつながります。
石綿対策の基本的な手順と流れ
石綿対策は主に以下のプロセスで進行します。この流れを理解することで、事業者や関係者が適切な対応を計画・実行しやすくなります。
1. 事前調査を行う
建物の解体・改修に先立ち、石綿を含むかどうかの有無調査が必要です。設計図書や過去の施工記録、目視調査、専門家によるサンプリング調査などを通じ、石綿が用いられているか判定します。
- 専門知識を有する調査員による精密調査が望まれます。
- 調査結果は労働者の見やすい場所に掲示し、一定期間保存することが求められます。
2. 作業計画を立てる
調査結果を踏まえ、実際の解体や改修作業を行う建物で石綿使用が明らかになった場合、事業者は「石綿障害予防規則」に従った作業計画を策定します。その内容には以下が含まれます。
- 作業の方法・手順
- 石綿粉じんの発散防止・抑制策(湿式処理、集塵設備の設置など)
- 労働者への粉じん暴露防止措置(防護マスク着用、保護衣の使用、密閉空間での作業時の換気など)
許可が必要な工事の場合、計画策定後、労働基準監督署長への届出も必要です。 -
3. 届出を行う
一定の条件下における石綿除去作業については、作業開始前までに労働基準監督署に作業計画を届出なければなりません。
- 特に吹付け石綿の除去作業や、石綿含有断熱材・耐火被覆材・保温材を取り扱う場合は届け出が必要です。
- 届出により、監督署は適切な法令遵守を確認し、必要に応じて指導・監督を行います。
-
4. 隔離措置などの対策
石綿を除去する作業場は、他の作業場所から隔離し、粉じんが拡散しないようにする必要があります。具体的には以下の措置が求められます。
- 作業場所を専用シートや隔壁などで他の区域から物理的に遮断
- 集じん・排気装置を用いた負圧管理(作業場内を周囲より気圧が低い状態に保つ)
- 作業場所の出入口に前室を設置し、外部への粉じん拡散を防ぐ
-
5. 立ち入り禁止措置
石綿を含む建物の解体・除去作業中は、当該作業に従事しない者の入場を禁止する措置も必要になります。立ち入り禁止エリアであることを示す標識を見やすい場所に掲示し、周囲に周知することで、不用意な接近や暴露リスクを回避します。
弁護士に相談するメリット
石綿対策に関しては、労働安全衛生法や石綿障害予防規則などの法令を正しく理解する必要があります。法令違反は事業者の罰則や訴訟リスクにつながる可能性があるため、専門家への相談は有益です。
- 法的リスクの最小化
弁護士は、関連法規(労働安全衛生法、石綿障害予防規則、関連告示やガイドライン)を正確に把握しています。これにより、事前の計画策定から届出手続き、作業プロセス、記録保存まで、法的リスクが少ない手順をアドバイスできます。 - トラブル防止・紛争対応
近隣住民や労働者とのトラブル、下請業者との対立が発生した場合にも、弁護士は交渉や解決策の提示を行えます。事前に相談することで、潜在的な紛争を未然に防ぎ、スムーズな作業進行に寄与します。 - 適切な契約書・規約整備
元請・下請など関係業者との契約書や覚書の整備は、法的専門知識が必要です。弁護士に相談することで、責任範囲が明確化され、石綿対策に伴う費用負担や損害賠償リスクを明確にでき、後々の混乱を避けられます。 - 最新情報の入手
法令・規制は改正や更新が行われることがあります。弁護士に相談すれば、最新の規制動向に基づいた対応策をタイムリーに得ることができます。
まとめ
石綿対策は、法令に従った事前調査、計画策定、届出、隔離・立ち入り禁止措置など、段階的な対策が求められる重要なプロセスです。これらを疎かにすると、労働者や周辺住民の健康被害、法令違反による行政処分、または訴訟リスクなど、深刻な問題に発展する可能性があります。
本ガイドを通じて、一般の方にも理解しやすい表現で、石綿対策の流れや要点、弁護士に相談するメリットを示しました。法的な観点と実務的対策を適切に組み合わせ、より安全で健全な事業運営を行うためのご参考となれば幸いです。
関連動画のご案内
企業が法的なリスク管理を行う際、石綿対策以外にも、さまざまな労務管理や労働安全衛生、企業法務上の課題が生じることがあります。さらに詳しく知りたい方は、当事務所で配信している以下の企業法務解説動画をご参照ください。最新のトピックや実務上のポイントなど、映像を通じてわかりやすく解説しています。
顧問サービスのご案内
契約書の確認から労務問題、トラブル対応まで、リスクを最小限に抑え、安心して事業を展開するためのサポートをご用意しております。
お問い合わせ
ご相談はお気軽に