コラム

2026/02/17 コラム

【建設業】工事代金・下請代金が未払い!確実に回収するための実践的法的手順

はじめに

建設工事の請負代金は高額になることが多く、また、着工から完工・入金までの期間が長いという特徴があります。そのため、相手方の経営状況の変化や、工事内容に関する認識のズレ(言った言わない)が、支払いの遅延や拒絶に繋がりやすいのです。

「長い付き合いだから強く言えない」「もう少し待てば払ってくれるだろう」という遠慮や楽観視は禁物です。債権回収の鉄則は「早期着手」です。時間が経てば経つほど、相手方の資産は散逸し、回収は困難になります。

本記事を通じて、泣き寝入りせず、正当な権利として報酬を回収するための武器(知識)を身につけてください。

未払い・債権回収に関するQ&A

まずは、未払いトラブルに直面した経営者様からよくいただく質問に対し、QA形式で簡潔にお答えします。

Q1. 元請業者が「施主からまだ入金がないから、そちらにも払えない」と言ってきます。待たなければなりませんか?

原則として、待つ必要はありません。

元請業者と下請業者間の請負契約は、発注者(施主)と元請業者間の契約とは独立したものです。したがって、元請業者は「施主からお金をもらっていない」ことを理由に、下請代金の支払いを拒否したり遅らせたりすることは法的に認められません。特に元請業者が特定建設業者である場合、下請代金支払遅延等防止法などの規制により、厳格な支払期日が定められています。

Q2. 契約書を作らず、口約束だけで追加工事をしてしまいました。請求書を送っても無視されていますが、回収できますか?

回収は可能ですが、証拠集めが重要になります。

契約書がなくても、工事の依頼があり、それを完成させた事実があれば、契約は成立しており代金請求権は発生します。しかし、裁判等になった場合、「頼んでいない(勝手にやった)」「それは本工事に含まれている(無償)」と反論されるリスクがあります。現場監督とのメールやLINEのやり取り、作業日報、納品書、図面、現場写真など、工事の指示と実施を裏付ける証拠を早急に集めてください。

Q3. 相手の会社が倒産しそうです。未払いの工事代金を回収するために、現場の資材を引き上げてもいいですか?

自力救済(実力行使)は禁止されており、窃盗罪や建造物侵入罪に問われるリスクがあるため推奨できません。

ただし、所有権留保特約などが契約にある場合は別ですが、基本的には法的な手続きを踏む必要があります。相手が破産する前であれば、仮差押えなどの保全処分を行うか、あるいは施主に対して債権譲渡の交渉を行うなどの緊急措置を検討すべきです。

解説:工事代金回収の具体的な4つのステップ

未払いが発生した場合、感情的になって怒鳴り込んだり、逆にただ手をこまねいて待っていたりしても解決しません。以下のステップに従って、冷静かつ迅速に行動することが回収への近道です。

ステップ1:現状把握と証拠の確保

まずは、請求の根拠となる資料を整理します。弁護士に相談する際にも、これらの資料が揃っていると対応がスムーズです。

  • 契約関係書類: 工事請負契約書、約款、注文書、請書、見積書。
  • 施工の事実を証明するもの: 図面、仕様書、工程表、作業日報、現場写真(着工前・施工中・完工後)、納品書、完了検査報告書。
  • やり取りの記録: 打合せ議事録、メール、LINEFAX、これまでの請求書と送付記録。

特に、「追加工事」の未払いについては、当初の契約書には記載がないため、「追加工事を行うことの合意」と「金額の合意」があったことを示すメモやメールが決定的な証拠となります。

ステップ2:内容証明郵便による催告

電話や通常の請求書で支払われない場合、次は「内容証明郵便」を送付します。

  • 内容証明郵便とは: 「いつ」「誰が」「誰に」「どのような内容の文書」を送ったかを郵便局が公的に証明してくれるサービスです。
  • 効果心理的プレッシャー: 弁護士名義などで送ることで、「支払わなければ法的手段を取られる」という本気度を伝え、支払いの優先順位を上げさせることができます。
  • 効果時効の完成猶予(中断): 工事代金債権には時効があります(原則5年など)。内容証明郵便で「催告」を行うことで、時効の完成を6ヶ月間遅らせることができます。
  • 効果証拠保全: 裁判になった際、「請求した事実」の明確な証拠となります。

ステップ3:法的手段の選択(裁判所の手続き)

内容証明を送っても反応がない、あるいは話し合いが決裂した場合は、裁判所の手続きを利用します。請求額や事案の性質に応じて、最適な手段を選びます。

手続き

特徴

向いているケース

支払督促

裁判所での審理(出廷)を行わず、書類審査のみで相手に支払いを命じる手続き。手数料が安い。

相手が未払い自体は認めているが払わない場合。相手が異議を出すと通常訴訟に移行する。

少額訴訟

60万円以下の請求に限られるが、原則1回の期日で審理が終わり、即日判決が出る。

未払い額が少ない場合。迅速に解決したい場合。

民事調停

裁判官と調停委員が間に入り、話し合いでの解決を目指す。合意(調停成立)すれば判決と同じ効力を持つ。

相手との関係を完全に壊したくない場合や、不具合の有無など事実関係に争いがある場合。

通常訴訟

正式な裁判。証拠に基づき、裁判所が白黒をつける。判決まで時間がかかるが、確定すれば強力な権利となる。

金額が大きい場合、相手が徹底的に争う姿勢を見せている場合。

ステップ4:強制執行(差押え)

裁判で「勝訴判決」を得たり、支払督促が確定したりしても、相手が素直に払わないことがあります。その場合、国の力を借りて無理やり回収する「強制執行(差押え)」を行います。

建設業の債権回収において、特に有効な差押え対象は以下の通りです。

  1. 第三債務者に対する債権(売掛金)の差押え
    相手(元請)が、別の施主に対して持っている「請負代金請求権」を差し押さえます。施主から元請へ支払われるはずのお金を、裁判所を通じて直接自社に取り立てることができます。これは相手の資金繰りを止める強力な手段です。
  2. 銀行預金の差押え
    相手の取引銀行の口座を差し押さえ、預金残高から回収します。
  3. 動産・不動産の差押え
    自社ビルや重機、車両などを競売にかけ、その代金から配当を受けます。

特殊なケース:元請業者が倒産した場合

相手が倒産(破産、民事再生)してしまった場合、回収は非常に困難になりますが、諦めるのはまだ早いです。

  • 特定建設業者の立替払制度: 特定建設業者が元請の場合、特定建設業許可の要件として、下請代金の支払いが滞った際に備えた制度等が設けられている場合があります。
  • 施主への直接請求: 法律上は原則として認められませんが、元請・施主・下請の三者間で合意ができれば、施主から下請へ直接支払ってもらうことは可能です。
  • 債権者破産の申立て: 相手が資産を隠している疑いがある場合など、債権者側から破産を申し立てて管財人に調査してもらう方法もあります。

弁護士に相談するメリット

未払い金の回収は時間との勝負です。弁護士法人長瀬総合法律事務所にご依頼いただくことで、以下のようなメリットがあります。

1. 相手方への強力なプレッシャー

弁護士名義で内容証明郵便を送るだけで、相手方の対応が一変し、支払いに応じることが多々あります。「裁判になれば勝てない」「会社の信用に関わる」と相手に認識させることができます。

2. 複雑な手続きの代行と戦略立案

支払督促、仮差押え、訴訟、強制執行など、状況に応じた最適な法的手段を選択し、複雑な書類作成や裁判所とのやり取りをすべて代行します。経営者様は本業に専念していただけます。

3. 資産調査と保全処分

訴訟をしている間に相手が財産を隠したり、使い込んでしまったりするのを防ぐため、裁判の前に相手の財産を仮に差し押さえる「保全処分(仮差押え)」を迅速に行います。これにより、勝訴したのに回収できないという事態を防ぎます。

まとめ

建設業における報酬の未払いは、経営の根幹を揺るがす緊急事態です。

「忙しいから」「相手との関係があるから」と放置すればするほど、回収率は下がっていきます。

  • 未払いが発生したら、直ちに証拠(契約書、日報、メール等)を確保する。
  • 内容証明郵便で催告し、時効を中断させるとともに本気度を示す。
  • 少額訴訟や支払督促など、コストを抑えた法的手段も検討する。
  • 最終的には相手の売掛金や預金を差し押さえる覚悟を持つ。

もし現在、工事代金の未払いでお悩みであれば、弁護士法人長瀬総合法律事務所にご相談ください。

貴社の売上を守り、正当な対価を回収するために、建設業法務を扱う弁護士がサポートいたします。


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