コラム

2024/12/11 コラム

建設業におけるジョイントベンチャーとは

はじめに

建設業において、規模の大きいプロジェクトや技術的に複雑な工事では、複数の企業が共同で事業を進めることが求められる場合があります。その際によく用いられるのが「ジョイントベンチャー(JV)」という仕組みです。本稿では、建設業におけるジョイントベンチャーの基本から、分類、代表者選出の手続き、さらには弁護士に相談するメリットについて解説します。

 Q&A: ジョイントベンチャーに関する疑問

Q1: ジョイントベンチャーとは何ですか?

A: ジョイントベンチャー(JV)とは、複数の企業が協力して一つの建設プロジェクトを遂行するために形成する共同事業体を指します。

Q2: ジョイントベンチャーを利用するメリットは何ですか?

A: 資金、技術、ノウハウの共有が可能になり、大規模工事を効率的に遂行できます。また、リスク分散にもつながります。

Q3: 代表者選出の必要性は何ですか?

A: 法律上、責任の所在を明確にするために、ジョイントベンチャーの代表者を選定し届け出る必要があります。

ジョイントベンチャーとは

ジョイントベンチャー(以下JV)は、複数の建設業者が共同で一つのプロジェクトを請負・施工するために形成される事業組織体です。この仕組みは特に、規模が大きく技術的に複雑なプロジェクトで採用されます。例えば、橋梁やトンネル、高層ビルの建設といった大規模構造物の工事がこれに該当します。

JVは、以下の2つの施工方式に分類されます。

  1. 共同施工方式
    構成企業が共同で施工を担当し、境界が明確でない形でプロジェクトを進める方式です。この方式では、責任の所在が不明確になりやすいため、労働安全衛生法に基づき代表者を選任する必要があります。
  2. 分担施工方式
    工事全体をいくつかの工区や工種に分け、それぞれを構成企業が独立して担当する方式です。この方式では各企業が独立した責任体制を持つため、トラブルが起きた場合も責任が明確になります。

ジョイントベンチャーの分類

JVは、その形成目的によって次の2つに分類されます。

  1. 特定建設共同企業体(特定JV)
    特定JVは、特定の工事プロジェクトごとに形成されます。構成企業は技術力や資源を結集し、一体となって施工にあたります。この方式は特に技術的難度が高いプロジェクトに採用されることが多く、工事完了後に解散するのが一般的です。
  2. 経常建設共同企業体(経常JV)
    経常JVは、中小建設企業が継続的に協力するために形成される組織です。この形式では、組織自体が一定期間存続し、複数のプロジェクトに対応します。経常JVは企業の施工能力や経営力を向上させる目的で活用されます。

代表者選出の手続

JVにおいて特に重要なのが「代表者」の選出とその届け出です。労働安全衛生法では、共同施工方式のJVの場合、責任の所在を明確にするために、以下の手続きが義務付けられています:

  1. 代表者の選定
    構成企業間で協議し、出資割合や責任の程度を考慮して代表者を選定します。原則として法人代表責任者(社長)が選任されますが、広範な権限が支店長に委譲されている場合は、その支店長が代表者となることもあります。
  2. 届け出
    代表者を選定した後、工事開始の14日前までに「共同企業体代表者(変更)届」を作成し、管轄の労働基準監督署長を経由して都道府県労働局長に提出します。
  3. 届出内容
    届出には、事業の種類、共同企業体名、所在地、発注者名、工事概要、工期、請負金額、代表者の氏名などを記載します。

代表者が未選定の場合は、都道府県労働局長が指名することとなります。また、代表者変更が生じた際も速やかに届出が必要です。 

弁護士に相談するメリット

JVの設立や運営においては、契約内容や責任範囲の明確化が極めて重要です。弁護士に相談することで以下のメリットが得られます。

  1. 契約書の作成・確認
    JV契約書には、各構成企業の責任範囲や出資割合、リスク分担のルールを明確に記載する必要があります。弁護士が法的観点から契約内容をチェックすることで、後々のトラブルを未然に防ぐことができます。
  2. トラブル時の対応
    工事中に紛争やトラブルが生じた場合、迅速かつ的確な対応が求められます。弁護士のアドバイスにより、法的リスクを最小限に抑えることが可能です。
  3. 法令遵守の支援
    建設業法や労働安全衛生法など、JV運営に関わる法令の遵守を徹底するために、弁護士の助言が役立ちます。

まとめ

建設業におけるジョイントベンチャーは、規模や技術が求められる工事を効率的に遂行するために欠かせない仕組みです。その一方で、責任の所在や運営ルールが不明確だとトラブルを招く可能性があります。そのため、JVを円滑に運営するためには、法令を遵守し、必要な手続きを確実に行うことが重要です。

また、弁護士のサポートを受けることで、契約や法的リスクの管理を徹底し、JV運営の透明性と効率性を高めることができます。当事務所では、建設業に特化した法務支援を行っておりますので、お気軽にご相談ください。

 

 


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