2026/01/16 コラム
建設業許可後の落とし穴!各種届出・報告義務の解説と違反リスク
はじめに
建設業許可を取得された事業者の皆様、日々の現場管理や営業活動、日々様々な課題に向かい合っていることと思います。
苦労して要件を揃え、ようやく取得した建設業許可ですが、許可取得後もさまざまな「義務」が課せられていることを正確に把握されていますでしょうか。
建設業法は、発注者保護や工事の適正な施工を確保するため、許可業者に対して、経営状況や組織体制に変更があった場合の報告を厳格に求めています。しかし、実務の現場では、「現場が忙しくて届出を忘れていた」「税理士に任せているから大丈夫だと思っていた(実は建設業法の届出は管轄外だった)」といった理由で、届出漏れが発生するケースもあり得ます。
「知らなかった」では済まされないのが法律の世界です。届出義務違反は、許可の更新ができないだけでなく、行政処分や罰則の対象となり、企業の社会的信用を大きく損なうリスク(建設業法違反リスク)があります。
本記事では、建設業者が押さえておくべき「建設業の届出義務」の全体像と、「建設業報告」のポイント、そして万が一違反してしまった場合の影響について詳述します。
建設業許可と届出に関するQ&A
まずは、多くの建設業者様から寄せられる疑問について、Q&A形式で簡潔にお答えします。
Q1. 役員や営業所の住所が変わりました。いつまでに届け出ればよいですか?
変更事項によって期限が異なりますが、原則として変更があった日から「30日以内」または「2週間以内」に届出が必要です。
例えば、商号、資本金、役員、営業所の所在地などの変更は30日以内ですが、経営業務の管理責任者(経管)や専任技術者(専技)に関する変更は2週間以内と、非常に短い期限が設定されています。期限を過ぎても届出自体は受理されますが、始末書の提出を求められたり、罰則の対象となったりする可能性があります。
Q2. 決算変更届(事業年度終了届)は、税務申告をしていれば提出しなくても良いですか?
いいえ、税務申告とは別に、許可行政庁への提出が必須です。
税務署への確定申告とは異なり、建設業法に基づき、毎事業年度終了後4ヶ月以内に「決算変更届(事業年度終了届)」を提出しなければなりません。これを提出していないと、5年ごとの許可更新申請が受け付けてもらえないため、毎年提出する必要があります。
Q3. 届出を忘れていた場合、どのようなペナルティがありますか?
許可の更新拒否、行政処分、刑事罰(罰金等)のリスクがあります。
軽微な遅れであれば指導で済むこともありますが、長期間放置したり、虚偽の届出を行ったりした場合は、建設業法に基づく「指示処分」や「営業停止処分」の対象となります。また、情状が重い場合は、6ヶ月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金に処される可能性があります。
解説:建設業許可業者が負う届出・報告義務の全貌
建設業許可を維持・管理するためには、主に「毎年の報告」と「変更時の届出」の2種類を管理する必要があります。それぞれの詳細を見ていきましょう。
1. 毎年必須!「決算変更届(事業年度終了報告書)」
すべての建設業許可業者が、毎年必ず行わなければならないのが「決算変更届」です。これは、事業年度が終了してから4ヶ月以内に、許可を受けた行政庁(都道府県知事または国土交通大臣)に提出します。
決算変更届の目的
建設業法では、発注者が建設業者を選定する際の判断材料として、業者の経営状況や施工能力を公開することを求めています。提出された決算変更届は、一般に閲覧可能な状態(現在は都道府県によって閲覧制度が異なりますが、原則公開)となります。
提出する主な書類
税務申告書とは形式が異なり、建設業法独自の様式(建設業財務諸表)に書き換える必要があります。
- 工事経歴書(直前1年間の主な工事実績)
- 直前3年の各事業年度における工事施工金額
- 貸借対照表、損益計算書(建設業法様式)
- 株主資本等変動計算書、注記表
- 事業報告書(株式会社の場合)
- 納税証明書(法人税または所得税)
よくある誤解と注意点
「税理士さんがやってくれているはず」という思い込みは危険です。建設業専門の税理士であれば対応してくれることもありますが、一般的な税理士顧問契約には「建設業法上の届出」が含まれていないことが多々あります。自社で責任を持って管理するか、行政書士等の専門家に依頼する必要があります。
2. 変更があった場合の「変更届」
会社の基本情報や、許可の要件に関わる事項に変更があった場合は、その都度、定められた期間内に変更届を提出しなければなりません。特に注意すべきは「提出期限」の違いです。
「2週間以内」に届出が必要な事項
許可の根幹に関わる人的要件の変更は、タイトなスケジュールが求められます。
- 経営業務の管理責任者(経管)の変更・交代
- 専任技術者(専技)の変更・交代
- 令3条の使用人(支店長など)の変更・交代
- 欠格要件に該当した場合
これらは、退職や死亡などによって不在になると、即座に許可要件を満たさなくなる可能性がある重要事項です。後任者が要件を満たしているかどうかの確認も含め、迅速な対応が不可欠です。
「30日以内」に届出が必要な事項
会社の組織や所在地に関する変更は、30日以内とされています。
- 商号(会社名)や屋号の変更
- 主たる営業所、従たる営業所の所在地変更
- 営業所の新設・廃止
- 資本金の変更
- 役員の就任・辞任・退任
- 支配人の変更
その他の届出(廃業届など)
許可を受けている建設業を廃止した場合や、合併・破産などにより会社が消滅した場合は、30日以内に「廃業届」を提出する必要があります。これを怠ると、将来的に再取得を目指す際に支障が出る可能性があります。
3. 違反した場合のリスク(法的制裁と実務的影響)
届出義務を怠ることには、法的な処罰だけでなく、実務上、会社の存続に関わる重大なリスクが伴います。
建設業法上の処分・罰則
建設業法第50条等は、届出を提出しなかったり、虚偽の記載をして提出したりした場合の罰則を規定しています。
- 6ヶ月以下の拘禁刑 または 100万円以下の罰金
- 情状が重い場合、指示処分(業務改善命令)や営業停止処分の対象
「うっかり忘れていた」程度であれば、速やかに提出し、始末書を添えることで行政指導に留まるケースもありますが、悪質な放置や虚偽報告は厳しく処罰されます。
許可更新ができなくなる
建設業許可は5年ごとに更新が必要です。この更新申請の際、過去5年分の決算変更届がすべて提出されていることが必須条件となります。
更新直前になって「5年分まとめて提出」しようとすると、膨大な書類作成の手間がかかるだけでなく、行政庁から厳重な指導を受けたり、始末書の提出を求められたりします。最悪の場合、更新手続きが間に合わず、許可が失効してしまいます。
信用力の低下と融資への影響
提出された決算変更届等は、閲覧制度を通じて誰でも見ることができます。元請企業や金融機関は、取引先や融資先の審査において、これらの資料を確認することがあります。
- 「決算変更届が出ていない=コンプライアンス意識が低い会社」とみなされ、取引停止になるリスク。
- 公共工事の入札参加資格審査(経審)を受けられなくなるため、公共工事から締め出されるリスク。
4. 経営業務の管理責任者・専任技術者の不在リスク
特に注意が必要なのが、各種届出の中でも「経営業務の管理責任者」や「専任技術者」が退職等で不在になった場合です。
これらは許可の必須要件であるため、不在となった日から2週間以内に後任を補充し、変更届を出さなければなりません。
もし、要件を満たす後任者がおらず、空白期間ができてしまった場合、原則として許可の取消し事由に該当します。この場合、単なる届出漏れではなく、廃業届を提出して許可を返納し、体制が整ってから新規で取り直すというプロセスが必要になることもあります。
この判断は極めて専門的な知識を要するため、予兆(担当者の退職相談など)があった段階で、直ちに弁護士等の専門家に相談することをお勧めします。
弁護士に相談するメリット
建設業の届出・報告業務は、形式的な手続きに見えて、実は会社の存続に関わる重要な法的対応です。弁護士法人長瀬総合法律事務所にご相談いただくことで、以下のようなメリットがあります。
- コンプライアンス体制の構築とリスク管理
単に書類を作成・提出するだけでなく、貴社の現状が建設業法の要件を継続的に満たしているかを診断します。特に、役員の変更や事業承継のタイミングでは、許可要件が維持できるかを法的に精査し、無許可状態になるリスクを回避します。 - 行政処分への対応と折衝
万が一、長期間の届出漏れが発覚した場合や、行政庁から指導を受けた場合、弁護士が代理人として適切な対応策を検討します。行政庁への事情説明や報告書の作成をサポートし、可能な限り処分が軽減されるよう尽力します。 - 建設業法以外の法務課題へのワンストップ対応
建設業の経営には、業法遵守だけでなく、請負契約のトラブル、労務管理(残業規制・社会保険)、債権回収など、多岐にわたる法律問題が付随します。当事務所は建設業法務に特化しており、届出に関する相談を入り口として、経営全般の法的リスクをサポートすることが可能です。
まとめ
建設業許可における各種届出・報告義務は、事業を行う上での「パスポートの更新」のようなものです。期限を守り、正確な情報を報告することは、単なる義務の履行にとどまらず、取引先や社会からの信頼を獲得するための基盤となります。
- 決算変更届は4ヶ月以内に提出する。
- 役員や営業所、技術者に変更があった場合は、2週間〜30日以内に届け出る。
- 届出を怠ると、許可の更新不可、罰金、営業停止などの重大なリスクがある。
日々の業務が多忙であることは重々承知しておりますが、「知らなかった」「忘れていた」が会社に致命傷を与える可能性があります。
もし、現在届出が滞っている、あるいは社内の管理体制に不安があるという経営者様は、問題が大きくなる前に、ぜひ一度、弁護士法人長瀬総合法律事務所にご相談ください。貴社の事業を守り、発展させるための最適なサポートを提案いたします。
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